それ、無駄褒めかも?子どものやる気を引き出す、3つの正しい褒め方

「子どもは褒めて育てよう」

最近の子育てでよく言われる言葉です。

実際に、子どもが褒められると、自分を肯定的に見る自己肯定感が育ち、物事に対して前向きに取り組む姿勢が伸びるそうです。

ただ、「本当に叱るよりも褒める方がいいの?」「わがままな子になってしまわない?」と、褒めることに抵抗を持っている方も多いと思います。

我々日本人は、謙遜する態度を尊重する文化を持つので、あまり「褒める」ということに対しての免疫が強くありません。また、昔の修行のような「厳しさが人を育てる」という風潮も未だに根強く残っていますし。

結論から言いますと、子どもをダメにしてしまう褒め方もあります。必ずしも「褒める」という行動が子どもにプラスの影響のみを与えるわけではありません。

いわば「褒めること」は諸刃の剣。今回は子育てにおいて重要なテクニック、「褒める」の正しい3つの使い方を紹介していきます。

褒める=認める

①高く評価していると,口に出して言う。たたえる。 「よく頑張ったと-・められる」 「上手な字だとみんなが-・める」
②祝う。祝福する。
(三省堂 大辞林より)

辞典によれば、「褒める」という言葉には、このような意味があるようです。

ただし、これをそのまま子育てにおいて、この意味をそのまま適用するのはよくありません。なぜかと言うと、「高く」評価できるものがないと、褒める機会がなくなるからです。

また、それが高い評価できるのか低く評価できるのかというのは、何によって決められるのでしょうか。

おそらく、周りと比べることによって、初めて子どもの行いに対して評価の高低がつけられるのでしょうが、それは周りに評価を委ねていることと同義で、目の前の子どもをそのまま見つめていることにはなりません。

そこで、まずは「褒める」の意味を、「評価する」でなく、「認める」に変えてみるのはいかがでしょうか。

自己肯定感を育てるための秘訣は、「『あなた』は『あなた』のままでいいんだよ」と認めること。この認識なしには、どんな褒め言葉も子どもには響きません。

この認識の下での有効な褒め方は、次のようなものになるでしょう。

「頑張り」を褒める

例えば、テストで我が子が90点を取ったとしましょう。あなたは、どのようにお子さんを褒めてあげますか?

ここでは、90点を取るために「勉強を頑張ったこと」を褒めるのが有効です。

「宿題毎日やっていたもんね、頑張ったね!」「最近漢字練習頑張ってたからだね。その調子!」と、90点という結果ではなく、90点に到るまでの過程にフォーカスを当てて褒めるのです。

子どもは、自分のしたことには意味があったのだと受け止め、もっと勉強を頑張ろうというやる気を強め、それが結果としてさらに成績を伸ばしていくのです。

このような褒め方であれば、たとえ60点だったとしても、「ちゃんと筆算の繰り上がりを忘れずに書いたから、計算問題はたくさん丸がついているね」と褒めるチャンスはいくらでも作れますよね。

能力を褒められた子はやる気が伸びない?

さて、私たち大人が人を褒めるときに「頭がいい」というフレーズをよく使いますよね。

実は、これは子どもを褒めるときの言葉としてはNGです。これについては、スタンフォード大学のキャロル・ドゥエック教授が行った実験が有名です。

キャロル教授は、はじめに生徒全員にテストを受けさせた後、生徒たちを2つのグループに分けました。片方のグループ(便宜的に「A」とします)には

A:「よくできたわ、頭がいいのね

もう片方のグループ(B)には

B:「よくできたわ、頑張ったのね

と褒め、その後、2回目のテストを受けさせました。そのとき、「1回目と同じレベルの問題」か「もっと難しい問題」を解くかを生徒に選ばせたところ、Aグループは1回目と同じレベルの問題を選択し、
Bグループはなんと9割が難しい問題を選択しました。

この実験から、能力や結果よりも努力や過程を褒める方が、子どもの意欲の向上につながることがわかりました。

Aグループの意欲が向上しなかったのには、能力がないことがわかると褒められない=自分の価値がなくなるという強迫観念が湧いてくるからと考えられます。

褒めることが人を高く評価するという、辞典通りの褒め方の認識のままでは、わたしたちはおそらくAの褒め方をしてしまうことでしょう。だからこそ褒め方の認識を変えるのは大切ですね。

根拠を添えて褒める

褒めることが大事だからといって、某SNSのボタンのような「いいね」を連発するのは意味がありません。むしろ、必要以上に褒めるのは逆効果です。

わたしが今、あなたの「何を」褒めているのか。それがわかる根拠と共に伝えてあげましょう。

例えば、先ほどのテストで我が子が90点を取った場合であれば、闇雲に「頑張ったね!」だけではいけないということです。

宿題毎日やっていたもんね、頑張ったね!」と、子どもの何に対して「頑張ったね」と言っているのかがはっきりわかるように伝えてあげましょう。

すると、子どもの中で。「宿題を毎日することは良いことだ」という認識が形成され、宿題に取り組む姿勢が強まります。

これは、勉強に限ったことではなく、「自分で靴をしまえたね。すごいね!」と、日常生活の中でも使うことができます。

I(アイ)メッセージで伝える

最近、いろんな場面で注目されているアドラー心理学。

アドラーによれば、人は「他者貢献」に幸福を感じる生き物で、人に感謝されることに最大の喜びを感じるとされています。

勉強1つにしても、

宿題ちゃんとやっているわね。頑張っているわね。

と言われるのと

宿題を頑張っている姿を見ると、お母さん嬉しくなるわ。

と言われるのとでは、子どもが受け取る印象はまったく違います。このように、

あなたがした行いで、わたしは幸せを感じている

という、「わたし」を主語にしたIメッセージの形で褒めてあげましょう。

日常生活なら、「お手伝いしてくれるからお母さん助かるわ、ありがとう」と、感謝の気持ちも伝えやすいですよね。

人に感謝されることで、子どもは「自分は誰かの役に立っている」と自分の存在価値を認め、自己肯定感を高めます。それがやる気に繋がっていくのです。

また、感謝することは、相手を対等な目線で見て初めてできる行いです。「えらいね」などという、相手を上から評価する見方ではできません。だからこそ、褒めることは認めることだと考えを改める必要が、ここでもあるのですね。

正しく使えば、褒めるは叱るよりはるかに良い

いかがでしたか。

使い方を間違えれば毒にもなる「褒める」ことは、逆に使い方を謝らなければ子育てにおいて、叱ることよりもはるかに有効なテクニックです。

子どもがしてはいけないことをしたときなど、叱ることもたまには必要ですが、叱った後のアフターケアも面倒ですし、何より子どもの心に良くありません。

むしろ場合によっては、今まで叱ってきたことだって、褒めて改善させることだってできます。褒めるというのは、それだけ効き目の強い「劇薬」なのです。