運動嫌いな子も主体的に参加できる!集団マット演技の実践記録をどうぞ!

この記事では、どの子もマット運動に主体的に取り組める、集団マット演技の実践を紹介します。

みなさん、子どものころマット運動は好きでしたか?

僕は、生粋の運動音痴でしたので、走るのはもちろんのこと、器械運動はほとんどできませんでした。

なんとか合法的に見学できる理由はないかとよく思案していました(笑)

そんな僕が、運動が苦手な子でもなんとかマットを楽しめないものかと考えて、
今年実践してみたのが集団マット演技でした。

実は指導要領にも明記されている

なんか特別な授業をしたような語り口になってしまいましたが、

実は学習指導要領解説の内容にも明記されているんです。

 [技の組み合わせ方の例]
○ 上に示した技や既にできる技を選び,それらにバランスやジャンプなどを加えて組み合わせたり,ペアやグループで動きを組み合わせて演技をつくったりすること。

とはいえ、体育だとどうしても技の習得に目が行きがちで、こういう創作運動はおざなりにされやすいです。

運動が苦手な子こそ、こういう活動なら楽しめるのではないかと考え、思い切って挑戦してみました。

目的は「楽しむ」と「協力」

集団マット演技とは、単に個人でマット技を披露するのではなく、
曲に合わせながらグループやペアでタイミング・方向等を工夫してマット技を披露する、
いわば簡易版新体操のようなものです。

前転や背支持倒立(アンテナ)など、個人でやると大したことない技でも、
集団マット演技だと、工夫次第ととてもかっこよく見えるので、
マットが得意でない子でも十分楽しめる可能性があります。

今回の集団マット演技で、僕が目的にしたのは以下の2つ。

  1. マットが苦手な子を含め、みんなが楽しむことができる
  2. 集団で1つの演技作品を作ることを通して、協力することの大切さとその成長を実感させる

体育的な目的に加え、もうすぐ6年生になる5年生の子どもたちが来年度学校をリードする立場になったときを見据えて協調性を高めたいという、学級経営的な視点も含めました。

実践の記録

技の習得

今までできる技だけで構成するのもアリですが、
やはり学年相応の技の習得も必要です。

今年は、倒立前転(倒立ブリッジ)と開脚前転を習得させました。

倒立前転の練習は、壁倒立→補助倒立→倒立ブリッジのスタンダードな手順で行い、
半分以上の子はできました。

倒立するときの手の位置と、倒立時には顔は前方、前転時は後方を向くことを意識させれば、
大体の子はできます。

しかし、成長期に入った女子や、体重が重い子は、
壁倒立の時点で体を支持させることが難しく、かなり難儀しました。

集団マットのイメージをもつ

技の練習に一区切りをつけたら、いよいよ集団マット演技の学習に入ります。

最初は教室で、YouTubeにアップされていた、小学生の映像を見せ、
集団マット演技がどんなものなのかをイメージさせました。

スプリング系の技も入っていたので、子どもたちは圧倒されていましたが、
ブリッジや飛び込み前転など、意外と自分たちができる技が多く盛り込まれていることに気づくと、
やる気を持ち始めました。

歌詞カードを使い、構成を考える

今回の課題曲は、DA PUMPU.S.A.(ただし、1番まで)。

U.S.A.の歌詞を、8拍を基準に区切りながら書いた歌詞カードを配り、

グループのリーダーを中心に、

  • 歌詞の「どこの」タイミングで
  • 「誰が」
  • 「何の」技をするのか

を考え、歌詞カードにメモさせていきました。

練習

構成があらかた決まれば、あとは練習あるのみです。

マットの敷き方はモデルにした小学校に倣い、3列でかつ両端のマットが伸びたような形にしました。

子どもたちのグループ数は2つにしたのですが、
残念ながらうちの学校のマットの枚数が少なかったので、きちんとした練習場所が1つしか作れませんでした。

そこで、練習の間に流れるU.S.A.の1番が3周したら場所を交換させ、待機中のグループは、余ったマットを集めて、そこで技の練習をするように指示しました。

なかなか完成には至らず、どうなるものかと思っていたら、
子どもたちから「休み時間にも練習してもいいですか?」と聞きに来ました。

子どもたちだけで休み時間にマット運動をさせるのは危険なので、
そのような時は、自分も体育館で見守るようにしました。

担任からではなく、自分たちから練習したいと言ってくれたのは、とても嬉しかったですね。

本番

本番は、互いの発表を見合うようにしたのですが、
空きコマで職員室にいらっしゃった6学年の先生と支援員もご招待しました。

身内でグダグダに盛り上がって終わってしまうことを防ぐためです。
外の目がある方が、適度な緊張感のもとで成果を発揮することができます。
授業参観で保護者の前で披露するのも良いかもしれません。

倒立ブリッジをした子の上を別の子が飛び込み前転したり、
向かい合わせになって前転した後、片方の子が後転して
2人とも同じ方向に転がるなど、
子どもたちの創意工夫が随所に散りばめられていました。

どちらのグループも1番終わりまできっちり完成はしていなかったのですが、

Aグループは最後の決めに組体操を取り入れたり、
Bグループはサビでひたすら全員で前転して、曲の盛り上がりを表現したりと、
不完全な部分を補うための工夫も見られました。

演技を見た先生からは、

「鳥肌が立った。6年生にも見せてあげたかった。」

というコメントをいただくことができました。

成果

誰もが主体的に学びに参加できた

集団マット演技を実践してみて、最も成果が得られたと感じたことは、
マットが苦手な子でも主体的に活動に参加できたことでした。

倒立前転の練習で、壁倒立すらできなかった子でも、「ここで交互に前転したらよくない?」と、
演技構成の工夫の場面で、グループに貢献することができるのです。

そして、ただの前転ではあるものの、自分が周りとタイミングを合わせて前転をすることで、
ただの前転が何倍もかっこよく見えます。

一体感による楽しさが味わえたからか、練習中はどの子も非常に生き生きとした表情でした。

先に述べた、自分たちから休み時間に練習したいと申し出た姿も、学びに対して主体的に取り組む態度の高まりであると感じています。

協調性の高まりが日に日に強く感じられた

練習をし始めた時は、どちらのグループも一生懸命頑張っているのは一部の子のみで、
多くの子はリーダーの話を聞かずにぼーっとしていたり、追いかけっこをしたりするなど、
協調性のかけらもない状態でした。

毎時間の練習の振り返りをリーダーに言ってもらい、
話を聞いてくれない辛さや困り感を全体に聞かせました。

すると、だんだん話を聞かない子が減り、それに反比例するかのように
「もっとこうしたらいいんじゃない?」と、
より良い演技構成にするためのアイディアを提案する子が増えたのです。

グループの誰かが、じゃれ合いからケンカになりかけたときには
今はケンカするときじゃないと、必死に間に入って止めようとする子もいました。

僕は、子どもたちの演技についてはほぼ口を出しませんでしたが、
代わりに、このような、みんなの力になろうとする態度を毎時間褒めるようにしました。

課題

選曲は慎重に

こういう演技もので、使用する楽曲のテンポはかなり重要です。

例えば、リズム縄跳びの場合は、BPMが116〜120くらいがちょうど良いです。

今回使用したU.S.A.は、マット演技にはテンポが早すぎたと反省しました。

実際に、練習中に子どもたちから
「曲をもっとゆっくりにできませんか?」と言われたので、
それ以降は0.8倍くらいの速度で流すようにしました。

BPMが90〜100くらいだとちょうど良いのかな…。模索していく必要があります。

時数の圧倒的な足りなさ

倒立前転などの技の習得も含めて、マット運動に費やした期間は1ヶ月。

演技の練習だけでも実に4時間使っていて、それでも1番を完成しきることは叶いませんでした。
子どもたちに、技を詰め込みすぎないように声かけをする必要があったと思います。

おかげで、縄跳びにかける時数をかなり減らさざるを得なくなりました(苦笑)

でも、運動を苦痛に感じている子たちのためには、意味のあった実践であったことは確信できたので、悔いはありません!笑